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LIGHTS UP IWATE インタビュー

岩手県盛岡市
スポーツクライミング選手 伊藤ふたばさん

壁を登れたときの達成感と爽快感。クライミングを「楽しむこと」が成長の源

日本を代表するクライマーとして活躍を見せる伊藤ふたば選手。TOKYO2020への出場にも期待が掛かります。2020年8月、地元・盛岡で開催される第33回リードジャパンカップを間近に控えた彼女。現在の心境を語っていただくとともに、岩手に対する思いを伺いました。世界で活躍する現役高校生としての素顔に迫ります。

 

▼まずは現在の活動状況を教えてください。
新型コロナウイルスの影響で残念ながらオリンピックは延期になってしまいましたが、今までどおりの練習はできています。ただ、本来ならすでにワールドカップが始まっていて、夏までずっと海外を転戦している予定だったのが、練習で東京にも行けない状況になってしまって…。ですので、今は岩手を拠点に練習しています。地元にこんなに長くいるのは、ここ数年なかったこと。本当に久しぶりですね。

▼今では世界で活躍される伊藤選手ですが、スポーツクライミングを始めたきっかけを教えてください。
お父さんが趣味でスポーツクライングをやっていたことが、そもそものきっかけです。それで私も小学2年生のときに初めて練習に連れて行ってもらったのですが、そのとき目に入ったのが、みんなが履いていたシューズでした。クライミングのシューズって、ちょっと変な形をしているんですよね。それで「なんだろう、これ?」って興味を持ったのが始まりです。そして実際に、その“変な形をしたシューズ”を履いて壁を登ってみたら、簡単なコースをすぐに登ることができたんです。それから夢中になって、毎週のように県営運動公園に足を運んで練習するようになりました。

▼クライミングを続けていこうと思ったのはいつ頃からですか?
始めてから1年も経たないうちにそう思うようになりましたね。小学3年生の冬に「THE NORTH FACE CUP」というイベントに出場したんですが、私にとっては初めての大会だったこともあり、そこに向けて一生懸命練習をしました。この大会は残念ながら負けてしまったのですが、終わったあと「次こそは勝ちたい!」という悔しさが、子供なりにこみ上げてきたのを覚えています。そこからワールドカップをはじめとした国際大会の中継をYouTubeなどで見るたびに、「自分もここに出たい!」「ここで活躍したい!」という感情がどんどん膨らんでいきました。

▼スポーツクライミングをやっていて、いちばん楽しいと思うのはどんなところですか?
登れなかった課題が、登れるようになったときの達成感が、いちばんの楽しさです。小学生の頃から今もずっと変わっていないのは、登れない課題があったときも「できないから無理」と言ってあきらめるのではなく「できないからこそ頑張りたい!」と思って取り組んでいること。あきらめずに何度でもチャレンジした分、登れたときの達成感は何倍にもなりますし、自分の力もどんどん伸びていきます。そうやって自分自身の成長を実感できるのも、クライミングの魅力だと思います。

▼最近では、伊藤選手に憧れてスポーツクライミングを始めている岩手の子どもたちも増えています。
とても嬉しいことです。私がスポーツクライミングを始めた当時は、競技自体があまり認知されていなかったのですが、最近では岩手にたくさんのジムができ、気軽にクライミングに触れられる機会が増えました。それは子どもたちにとっても大きな意味を持つと思います。私が活躍している姿を見た子どもたちが、クライミングにのめりこみ、どんどん成長していく。そんな役割になれていたら嬉しいです。近い将来、岩手から強い選手がたくさん現れてくれたらいいですね。

▼ちなみにいわて電力では「スポーツクライミング応援プラン」として競技の普及活動や選手たちの支援に力を入れています。最近では岩手でのスポーツクライミング熱も高まっているように見えますが、どのように感じていますか?
今回のインタビューもそうですが、今、たくさんの企業、スポンサー、メディアの方々がスポーツクライミングを取り上げてくださっています。金銭面でサポートして頂けることはもちろん有難いですし、競技自体の認知度も年々高くなってきているのは、こうした支援のおかげであると感じています。みなさんが盛り上げてくださることで、地域の人たちからもたくさんの応援を頂けるようになり、最近は街中を歩いていても声を掛けて頂く機会が多くなりました。今ではマスクを着けていても気付かれてしまうほどです(笑)。

▼4月には岩手県営運動公園にボルダリングの壁が完成しました。ハード面での整備も、選手にとって心強いのではないでしょうか?
ボルダリングの壁が完成し、これで県営運動公園には、リード、スピードと合わせて3種目すべての施設がそろいました。全国的に見ても3つそろっている場所は珍しい。ほとんどの人は練習しようと思っても、わざわざ県外に行って練習しなければならないのが現状です。岩手を離れなくても3種目すべての練習ができるというのは、移動時間の短縮という面でも、とても助かります。私も早速、新しくできたボルダリングの壁を登りました。充実した練習ができる素晴らしい施設を作っていただき、本当に感謝しています。

▼ちなみに、これまでたくさんの壁を登ってきたかと思いますが、印象に残っている壁などはありますか?
海外は、その国や土地によってさまざまな壁があって、とても面白いです。自分がいちばん好きなのは、オーストリアのインスブルックのジムにある壁。世界最大規模の壁と言われているのですが、迫力があって、そこに行くたびにテンションが上がります。それと、久慈の侍浜にあるフリークライミングの施設も印象に残っています。ここは自然で作られた岩場なのですが、クライミング用にしっかりと整備されていて、自分もたまに行っていました。野外にある自然の岩場なので、初心者にとっては少し怖いかもしれませんが、登ってみる価値はあると思います。隣にはキャンプ場もあるので、アウトドアも楽しめるはず。岩手のみなさんには、ぜひ足を運んでほしい場所です。ちなみに最近は大会や遠征などで忙しくなり、沿岸に行く機会は少なくなってしまいました。岩手にはまだ訪れたことのない場所もたくさんあるので、いつか旅行してみたいですね。なかでも海が大好きなので、宮古の浄土ヶ浜にはぜひ行ってみたいです!

▼コロナの影響で岩手で過ごす時間が長くなったと最初におっしゃっていましたが、生活の変化などはありますか?
もちろんあります。これまでは遠征で海外を行ったり来たりの生活でしたが、学校に行く機会が多くなったことで友だちと一緒に過ごす時間が増えました。家でも2年ほど前から飼っている愛犬のワムと触れ合うことで心が癒されています。また、私は食べることが大好きなんですが、岩手にいて毎日お母さんの手料理を食べられるのがすごくうれしい。海外を遠征していると、お肉やパスタ、ピザ、リゾット、そういう食事ばかりになって飽きてしまうので、3食こうして家庭の味が食べられて幸せです。

▼競技を続ける上で、学業との両立は大変ではないですか?
大会や遠征に行っている間も、高校生なので当然勉強しなければなりません。特にテスト前は練習の時間も削られたりして、生活リズムが崩れてしまう大変さはあります。ただ、自分で言うのもなんですが、意外とテストでは点数を取れているほうなので(笑)、今のところ勉強に関しては親からさほど厳しくは言われません。さすがに赤点を取ったら、怒られるとは思っています。得意な種目は、現代文と英語。英語は海外に行く機会も多いので、コミュニケーションを取っていくうちに覚えていくような感覚です。とは言っても、会話のほとんどがクライミングの話なので、日常会話ができるかと言われたらまだそこまでは達していませんが…。苦手な科目は世界史と日本史。暗記系が不得意なので、もっと良い点数を取れるように頑張りたいです(笑)。

▼この夏にはリードジャパンカップが盛岡で開催されます。応援してくれる岩手のみなさんにどういった姿を届けたいですか?
大会のない期間がずっとあり、試合勘がない中での戦いとなるので、少なからず不安な部分はあります。ボルダリング、スピードに続いての3冠が懸かっているので、もちろん出るからには勝ちたいですが、まずは持っている力のすべてを出し切りたいです。地元でやる大会とそうでない大会でいちばん違うのは、自分の家から試合会場に向かえること。自分がリラックスできる場所から試合に臨めるのは、気持ちの面でとてもプラスになります。その上に結果が付いてくれば、岩手のみなさんにも喜んで頂けるのではと思っています。今はまだ他の大会が開かれるか分からない状況ですが、今後も自分が出場できる試合があれば、一戦一戦を大事に、しっかり戦っていきたいです。

▼最後にスポーツクライミングを続ける岩手の子どもたちに対して、メッセージをお願いします。
いちばんは楽しむこと。「やらされている」という感覚ではなく、自分から「楽しもう!」と思うことが、何よりも大切。繰り返しになりますが、登れなかった壁を頑張って登れるようになったときの喜びは何事にも代えられません。達成感、爽快感を味わいながら、どんどんスポーツクライミングを好きになっていってほしいです!

Interviewer&ライター:郷内和軌

写真:井上健

 

[プロフィール]
伊藤ふたば(いとう・ふたば)
岩手県盛岡市生まれ。盛岡中央高校3年生。2017年のボルダリングジャパンカップでは史上最年少となる14歳9ヶ月での日本一を達成。18年からは本格的にワールドカップに参戦。世界を舞台に活躍するほか、20年2月のジャパンカップでは、ボルダリングとスピード2種目を制覇した。