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医療的ケア児支援プロジェクト一覧

盛岡市
高橋蓮君(5歳)   母・智恵さん

産後ケアの充実~医ケア児退院後もステップ踏める場を~

 


高橋蓮君(5歳) 母・智恵さん

地域    盛岡市
兄弟    長男(5年生)、三男(3歳)の3人兄弟
病名    アペール症候群
医療的ケア あり
ケア内容  痰の吸引、薬の吸入(朝晩2回)


蓮は個人病院で出産しました。産まれてすぐ「見た目が他の子と違う」と言われ、その日のうちにNICUに転院しました。通常より頭が大きく、手の指と足の指がくっ付いて産まれる合指症だったんです。呼吸も浅く、1カ月保育器に入りました。

診断は「アペール症候群」。合指症と合わせて早期頭蓋骨癒合症が大きな特徴です。通常はある程度成長してから固定される頭蓋骨が、胎児の段階で固定されてしまうので成長に伴い頭蓋骨内の脳にも影響が及び危険があります。退院後も、自宅で酸素が十分に足りているかパルスオキシメーター(血中酸素測定器)で様子をみる毎日でした。

◇危険と向き合い張り詰めた毎日
1歳までは検査入院や成長具合の観察のための通院が主でした。医者からは、検査のために眠らせると呼吸が落ちる心配があり「いずれは気管切開を」と言われていたので1歳で気管切開と頭蓋骨矯正の手術をしました。その日から24時間、医療的ケア(主に痰の吸引)が必要な状態になりました。

長男が小学校に入学したばかりでしたが、入院中も付き添いが必要で行事も参加できません。運動会の時など一時的でも頼めるサポートがないものでしょうか。大部屋なので休むスペースはパイプ椅子か蓮のベッドの上だけ。売店で食事を買ったりトイレに行くにも、蓮の痰の吸引の合間や看護師さんが忙しくない時を見計らって急いで戻って。2カ月入院しましたが、1カ月過ぎには病気が心配なのと気苦労でノイローゼになりそうでした。

退院後は離乳食との格闘です。気管切開のチューブが異物となりうまく飲み込めないことなどが原因となり、食べると必ず吐くんです。私の体やテーブルに吐物がかかって汚いままでも喉に吐物が詰まると危険なので、チューブの中に吐物が入らないよう気を張り詰めながら片付け、すぐに痰の吸引もする必要があるため、吐物処理も簡単には進められませんでした。チューブを固定するバンドも汚れると交換が必要ですが一人では難しく、万が一チューブが抜けたら危険なので「なんで私しかいないの」と何事も一人でこなさなければいけない心細さに気がめいりそうでした。

週2回の訪問看護を頼んでいましたが「今だれかそばにいてほしい!」という時、だれもいないのが辛かった。一人で命の危険と向き合いながら気が張り詰めた毎日で、当時の記憶もないくらい一生懸命でした。

◇短期入所で「ひやっ」とした出来事
その年の夏に三男の妊娠が分かり、出産前後に蓮が短期入所できるよう施設に申し込みました。すぐにお願いしていましたが、病院の先生の紹介状をもらい一度施設を受診し、そこから利用可能の受給者証が発行されるまでかなり待ち、許可が出たのは11月くらいでした。

ちょうどその頃、蓮は咳込むことが多く、施設の職員には「痰を詰まらせないよう注意してほしい」とお願いしていましたが、一度管が外れたことがあって。24時間見ている訳ではないので、すぐ気付けないですよね。声帯の下に管を入れていたので自力呼吸で泣き声を出せたのですが、声が出ない状態で気付くのが遅れていたらと思うと・・・。さらに、何かあればすぐ電話をいただける約束でしたがすぐに連絡がなく、翌日の面会で「そう言えば」と他人事のような対応だったので不信感を持ちました。やはり親じゃないとしっかり見られないんだというあきらめ、怒りもありましたが子どもを預けている以上は強く言いだせず、我慢してしまいました。

三男出産から1カ月後に退所。数カ月後には、2回目の頭蓋骨延長手術です。入院でまた付きっきりになるので、今度は三男を乳児院に1カ月預けました。長男の小学校生活のフォローもしたかったですが、なかなか手が回りません。2年生の運動会では夫だけが行き、蓮と私は入院病棟、三男は乳児院と、長男は相当寂しい思いをしただろうと今でも申し訳なく思います。入院の付き添いを1日だけでもお願いできるシステムが確立していればつらい思いをする家族が少しでも減ると思います。医ケア児は、看護師か家族でないと世話を頼めません。看護師でなくても医ケアできるよう講習などで基準を満たせばできる人を増やせるよう対応を考えてほしいです。

◇退院後のステップが踏める場所を
私はずっとフルタイム勤務で、蓮と三男の出産で2年続けて育児休業を取りました。仕事は好きで復職も考えていましたが、看護師在中の事業所が少ないことや、施設で不信な対応をされたことなど不安材料もあり、主治医には「2、3年はお母さんの手元で育てた方がいいよ」と背中を押してもらったことで退職を決意しました。

今は痰の吸引と、朝晩は薬の吸入をしています。他に服薬もあり、2週間に一度は管の交換で通院しています。昼間は自分で痰を出す力もついてきましたが、就寝中は親が吸引します。調子が良いと2~3時間おき、頻繁に吸引する時もあります。もう習慣ですから、私も夜はすぐ起きます。

振り返ってみて、やはり大変だったのは、医ケア児となってからの退院後です。術後の患部消毒、3時間おきの経管栄養、痰の吸引や、気管切開部にお湯が入らないよう抱きかかえてのお風呂など・・・一人で全部こなしながら、ずっと気が張り詰めていました。退院後、親子が一緒に過ごして日常へのステップが踏めるデイケアのような場所があると助かります。親が一人の時に何が起こるか分からないので、いろいろなケースを経験しながら家に帰れると心構えが違います。

◇地域の子どもたちと共に育ちたい
今はSNSで同じケア児の家族と情報交換したり、ハッシュタグで同じ障害の人を探したりして少しずつ情報を得ていますが十分ではありません。蓮も三男も、社会の単位が「家庭」だけになっているので、そろそろ三男も保育園の申し込みをしたところです。送迎には、蓮の吸引器を持って一緒に車に乗せて・・・。そう考えると不安もありますが、蓮も月に何度か外出して、親子で参加できるイベントなどに参加してみたいです。長男にもずっと習い事をさせていなかったのですが、今はスポ少に入っています。練習など送迎が難しい時、勇気を出して他のお母さんにお願いしたら快く受けてくれて・・・ホッとしました。

学校のPTAや町内会の役回りも多くて、悩みの種です。やりたくないのではなく、会議に出ていくのも本当に難しいです。そういった事情のある家庭を教育委員会や自治体などが情報共有し、地域にも情報が行きわたればいいなと思います。肩身が狭く住みづらい思いをすることがないような社会になってほしいですね。

長男がスポ少に参加したことで、私も気付かされたことがあって。周りの子は蓮を見て、最初は「こわい」「どうして顔が大きいの」と素直な反応を見せますが、理由を聞くとすぐに受け入れて「かわいい」と言ってくれるんです。子どもの頃からいろいろな人と出会うことで、偏見や差別は減らすことができるのではないでしょうか。「手がかかるから違うところに分ける」のではなく、地域の園や学校で育つことで互いに得るものがあるはずです。蓮も世話される一方ではなく、誰かの役に立ったり、関わりをもつことで優しさや自分を肯定する気持ちを培ってほしいと願っています。

近いうち就学の問題が出てきます。ここでも自治体や関係機関で情報共有されていれば、地域にこんな子がいると早い段階で気付いてもらえます。現在はそうではないので、教育委員会にイチから説明することになるのでしょう。望むことは地域の学校に通うことです。学校の看護師配置の整備が早急に進むことを願います。

蓮は心の大黒柱です。蓮が産まれて家族のコミュニケーションも増え、蓮を中心に家族が協力し合いコミュニケーションが増えています。蓮にももう一人支える兄弟がほしいと願って三男に出会い、私たち家族のカタチをつくったのも蓮のおかげだと思っています。我が家を選んで生まれてきてくれて本当に感謝しています。もちろん大変なこともありますが、気持ちだけは豊かに暮らしたいと思っています。